このコーナーでは、プロテックスポーツがサポートを行った参加者のレポートを紹介します。

 

Oct. 15-18 2006
2006 BAJA1000 Team Honda (アメリカンホンダ・ワークス)
1x Steve Hengeveld, Mike Childress, Quinn Cody

6x Robby Bell, Kendall Norman, Johnny Campbell

Report by デビル花輪


■今回は朝霞研究所(HGA)の有志達が勤務時間外にアメリカンホンダの為に作製したCRF450X BAJA仕様のレースサポートのレポートです。
私は今回で5回目のラパスまでのサポート、しかもアメホンレースチームで、言わば世界一のチームのサポートができると言う幸運。F-1ならフェラ―リでタイヤ交換をする様なもの???こんなことは滅多に無いので何がなんでも行くつもりでした。

ここでみんなが知りたいアメホンのワークス450xの仕様は・・・と言っても特殊なパーツは余り使っていない。詳しくは雑誌に出るだろうけど・・・・

・タイヤ:フロントムース、リアヘビーチューブ使用(ウルトラヘビーは経験上パンクする可能性が増えるそうなので使っていない。空気圧は1.1k)前は742(多分)後はD606で市販のダンロップタイヤ、ホイール他ノーマル。

・エンジン:基本は450X。ミッション他全てノーマル、セルは取り外して軽量化。圧縮アップとRのヘッド、カム、キャブ使用でパワーアップ。マフラーエキパイはプロサーキットのT−4。エンジンオイルクーラー(アフタマーケット品)を追加。

・フレーム:Xだがヘッドライト、ステダンのマウント追加のSPL品。リアフレーム、エアークリーナーはパワーアップと軽量化の為に全部Rから移植。

・スキッドプレート:XR650同様のプラスティックのSPL品。

・電装系:200Wの発電機はケースと共にSPL品。バッテリーレス用の点火系もSPL。

・ライト:昔から使っているハロゲン片側100Wの2灯ライト。HIDは明る過ぎて凸凹が見えなくなるらしく使用していない。

・サスペンション:レースチームが使用しているPrecision Conseptsがモディファイ。跳ね石でフォークが傷つくのを防ぐ為にシール・セーバーを付けている。

・ステアリングダンパー:HRC、アメホンのMXチームが使用しているダンパーをOFFロード用にセッティングして使用

こんなところでしょうか・・・・ライダー達も久しぶりのワークスバイク(?)と言う事で興奮気味でした。

レースチームは2チームでAチーム(1X)はマイク・チルドレス、クイン・コーディー、スティーブ・ヘンジベルド(通称:夜の帝王)とBチーム(6x)はロビー・ベル、ケンドル・ノーマン、ジョニー・キャンベル(監督兼任)です。今年はサンフェリーペ250、BAJA500と6xチームが450xで勝っており、シリーズチャンプとジョニーの10連勝をかけて6xは走ります。
実力は両チーム共同じ。ライダーは約330マイル一気に走り交代。平均速度は目標60mph!で走るとの事・・・ライダーチェンジはHonda Pit6(エル・クルセロ南)とPit12(サン・ホアンニート)の2回。サポートはPit6と12で前後ホイール、エアークリーナー交換、エンジンオイルチェックを行う予定。Pit12ではリアブレーキパッド交換とライト装着も行う。Pit12へはチェイスカーは間に合わないので前の日に移動していた。

■レース2日前:今回のマシンを作製したのはHGAの有志のメンバー達。仕事で作った訳ではなく、あくまでも勤務時間外に好き者が集まったクラブ活動に近い。そのメンバーがレース見学って事で6名がLAに到着した。サポート車はフォードの15人乗りバンで私を入れて7名でラパスまで行くことになった。運転は1人で行う・・・
いつもと違うのは、今回は仕事としてBAJAに行けると言う事。と言う事は海外出張だ!
会社の有るトーランスに集合して、道中の食料の買出しをして、BAJAへ南下したのが17時過ぎ。今回はラパスなのでボーダーでツーリストカードをさくさくっと発行($21でした)してもらいエンセナダに着いたのが22時だった。24時頃就寝・・・

■車検日:今日はメンバーにも自由行動と伝えて有るのでゆっくり寝れると思ったのが大間違い。ホテルは車検場の横のラピンタだったので朝の5時頃にバッバッバって爆音で起こされた・・・何だと思ったらレース車が車検の為にもう並び始めていた。車検は10時からなのに・・・次々と来る爆音で寝れたもんじゃないので起きてしまった。
6時頃にはアメホンのスタートライダーもプリランしに出て行っていた。アメホンの車両展示(?)は10時位から始まった。3時位まではレース車の雑誌の撮影や車検等の手伝い、プリラン車のメンテ等をしたが、450Xで出ると知ったトッププライベーターの顔に微笑みが浮かんだのも事実・・・耐久性とスピードが証明されていないマシンだから勝てるかも?と思ったに違いない。夕刻はライダーミーティングに参加してブルース監督とミーティングして指示を受けてから22時過ぎに就寝。明日は早いぞ!

■レース当日:4時出発!最初のサポート地であるHondaのPit6のエルクルセロ(南)に向かう。約290マイル運転。アメホンライダーは60mph平均で走ると思われるので到着時間は12時前後とすると我々は50mph平均で走れば10時位には着くのでかなり余裕がある。
安全と燃費も考えて最高速度は出しても75mph(120km/h)位に設定して淡々と走る。アベレージ50mphはエンセナダからエルロザリオまでは交通量が多くスピードが出せないと読んで出した数字で、無理の無い運転でも十分余裕があるはず。ところがサンクインティン辺りで朝の通勤ラッシュと濃い霧に当たり思った以上にスピードが稼げなかった。
サンクインティンでガス補給したがスタンドの変化に驚いた。きれいなトイレ(メキシコにしては)やミニストアまで付いていてコーヒーも買える!BAJAも変わった。エルロザリオからは山道になるが交通量も減りカタビナ辺りでは平均50mphに近くなっていた。
途中休憩で景色を撮影したりして10時に予定通りPit6に到着。2時間程余裕が有るのでお湯を沸かしてカップラーメンやサンドイッチを食べたりして昼食を取った。メンバーには、次はいつ食べれるか分からないのでちゃんと食べるように言った。
ここまで運転していて気がついたが道が整備されていてきれいになっていて、幅も前より広くなっていた事。BAJAも進化しています。

11時頃からアメホンのヘリからレース無線が入る様になって来て1xがトップ、もう一台の6xはブービートラップで転倒して遅れているが2位と言う情報だった。その後、6xはPit5手前でリアがパンクして45分遅れになっていた。
12時5分に1xがピットイン。このピットは333マイル(1/3)地点なのでフルメンテを行う予定で、ガス、前後タイヤ、オイルレベルチェック、エアークリーナー交換を行い3分でピットアウト。
この時初めてメンバー達はレース車に触っても良い事を知った。アメホンのピットのメンバーは基本的に素人がボランティアで、レースを楽しみに来ている。彼らの仕事はガソリンをPitまで確実に運ぶ事でメカのプロでは無い。特に今回は今までのXR650では無くて新しい450x、ホイール交換は練習しているのでできるが、その他の作業は基本的にライダーが行う。アメホンのライダーは一流のメカ知識も持っていないとならないのだ。でも実は1xの第一ライダーのマイク・チルドレスは監督からエアークリーナー交換は走って来た自分がやる事と指示を受けていたのだけど、前日に300マイル走って来てからちゃんと交換できるか分からないのでやって欲しいと頼まれていた。
単なる見学と思っていたメンバーも実際にレースに参加できて結構興奮していたと思う。そう我々は見学でなくて実は1xと6xのチェイス役を監督より任されていたのだ。(チェイス車はもう一台あり2台のみ)

6xが45分遅れとの事で、監督指示に従って1xのチェイスとなり次のサポート地のPit10(サンイグナシオ手前、約170マイル運転)へすぐに出発。1x到着は3時半頃の予定なので今までよりちょっと速いペースで運転する必要が有るが、サンイグナシオまでは真っ直ぐな道が続くので運転もかなり楽になった。ゲレロネグロの州境でパスポートチェックされたが無事通過、時間のかかるガス給油はこの区間では行わず、サンイグナシオには3時前に着いた。
1xは15時15分にガス給油のみでレースに戻った。ここで無線で6xが転倒してライダーが負傷、マシンにもダメージ有りと連絡が入った。ヘリの監督から転倒でダメージの有る車体の修理をする様に言われて6xのサポートの為に残る事となった。もう一台のチェイスのスコットさんは1xのチェイスで先に出発。6x到着まで1時間以上有るのでここでまた食事をして待った。ダメージはハンドルとの無線連絡だったので部品を用意して交換手順をメンバーで確認。またすぐ暗くなるのでライトもここで装着する事になった。(予定ではPit12、650マイル地点でフルメンテとライト装着だった)
16時半に6xが到着、ハンドル交換、ライト装着を行い約8分でピットアウトして行った。ちょっと手間取ったけどそれなりにできたと思った。

ここでメンバーの希望であった一位(1x)のゴールを見る事は残念ながら不可能になったので6xのサポートに切り替えてPit14(約150マイル運転)に向かう。
途中サンイグナシオで給油、山道を考えても時間的に余裕が有ったがサンタロザへの下り坂でここはやっぱりBAJAだと思わせる事件が起きた。ワインディングの下り坂で大型トラックが止まっていた・・・工事かな?と思ったが何かがおかしい。メンバーに見に行ってもらったらトラックはライトを消してドライバーも居ないですとの事。地元の車も反対車線を下って行くので付いて下りて行くとトラックは何台も止まっている。かなり先で大型トラックトレーラーが横転していた。我々が事故現場に着いた時はちょうどトラックの頭の部分を退かしている時で退けば通れそうとの事。
約40分後に片側が開きかなり無理やり現場を通過した。40分失ってしまったのでPit14は間に合うか?と距離とライダーの到着予定時刻を計算したが結構厳しい。道もハリケーン被害の有った部分で悪く、しかも暗くなった道ではスピードも出せず結局Pit14のは20時45分に着いたが6xに15分遅れで会えなかった。ここで3位の301xが結構近い位置らしい事を知った。(301xはその後トラブルで脱落)

急いで次のPit16(90マイル運転)に向かう。ここは計算上普通に走れば十分間に合う。もう20時間近く運転しているので無理はしない様に気を付け、必殺ユンケルを飲んで気合を入れた。Pit16には22時半に到着。ここのピットは町が近い事も有って凄い人だった。しばらくしたら第3ライダーのジョニーのメカのTJさんとジョニーの為に毎年イタリアアシャルビスから来ているウォルターさんと合流。メンバーはPit10でのハンドル交換の事で感謝されてまた感激。他のレースではライダーに感謝される事ってないのかな?と思う・・・
6xはその後は問題無く、乗っているジョニーも問題無しと無線で言って来ているとTJさんは言っていたのでほっとする。23時25分に6xがピットイン。ガスだけ入れて全開でピットアウトして行った。格好良い。

この先はPit18でまた会えるのだが、ゴールが見たいのとTJさん達が寄るとの事だったのでラパスに向かう事にした。インスルヘンテスでガス給油。そこは凄い霧・・・20mph位しか出せないのがしばらく続いた。Pit18は1時頃通過してラパスの光が見えたのは2時過ぎ、ゴールに着いたのは2時半だった。1xは1時前に既にゴールしていた。まずは目標の1位は達成!仕切られているゴールの方に監督の力で入り込み6xの到着を待つ。
6xは3時過ぎにフィニッシュして1-2達成した。しかも3位とは一時間近い差が付いていた。残念ながらジョニーの10連覇は無くなったが、その代わり450xで今年レースをしていたBチームがスコアーのチャンピオンになり来年は1xを付けて走る事になった。ゴールでの最終チェックでもマシンに問題は何も無く450xの耐久性も証明できて良かったと思う。
インタビューや写真撮影を行いホテルに向かったのは4時前。ホテルに着いたのは4時を過ぎていた。スタートしてから丸々24時間かかったサポートでした。が、いつもならまだゴールしていないよなーと思ったりして・・・アメホンライダーは平均57mphで走って来たんだからやっぱり彼らは人間じゃないなと思いました。サポートカーの平均速度は50mph程だから彼らがいかに速いかが良く分かります・・・

今回はBAJAでNo1のチーム員として参戦できて、BAJAを違う観点から見れたのは良い経験でした。勝つためのマシンには何が必要か?それは経験とテストから生まれるライダーのマシンに対する100%信頼であり、それが無ければあのスピードでは走れないと思います。また19箇所のピットメンバー、サポートのみんなの協力があってこその勝てるのだと思いました。
 


レポート:デビル花輪 (HONDA R&D America勤務)
 

 
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